【コラム】遺産分割協議書とは?

〜実家や不動産をめぐる相続トラブルを防ぐために〜

「親が亡くなり、実家をどうするか兄弟で話し合わないといけない」
「不動産があるけど、誰が相続するか決まっていない」
「売却したいけど、相続登記ができていないとダメって本当?」

そんなとき必要になるのが「遺産分割協議書」です。

相続の場面では「不動産」が大きなポイントとなります。現金のようにきれいに分けられず、売却や処分、解体などにも費用がかかり、感情や事情が複雑に絡みます。

この記事では、**相続でよく問題になる「実家や土地」などの不動産を、トラブルなく引き継ぐために欠かせない「遺産分割協議書」**について、基礎から分かりやすく解説します。


■ 遺産分割協議書とは?

「遺産分割協議書(いさんぶんかつきょうぎしょ)」とは、
相続人全員で話し合い、誰がどの財産を相続するのかを決めた内容を文章にまとめたものです。

たとえば、以下のような記載がされます:

  • 長男が実家の土地と建物を相続する
  • 次男が預貯金を相続する
  • 長女には現金100万円を渡す

このように、相続人全員の合意に基づき「誰が何を相続するか」を明文化した書類が「遺産分割協議書」です。単なるメモではなく、相続登記(不動産の名義変更)や金融機関での手続きにも必要となる、法的に重要な書類です。


■ いつ、なぜ必要なの?

相続が発生したら、まず以下の順番で進める必要があります。

  1. 遺言書の有無を確認
  2. 法定相続人を確定
  3. 相続財産を把握
  4. 遺産分割の話し合い(協議)
  5. 協議内容を協議書にまとめる(←ここが遺産分割協議書)

特に「実家」などの不動産が含まれている場合、遺産分割協議書がないと登記名義を変更できず、売却や解体といった処分もできません。


■ 不動産の相続でありがちなトラブルと協議書の役割

▽ ケース1:実家を兄弟で相続したが誰も住まず空き家に

兄弟3人で実家を相続したものの、誰も住まず、固定資産税や草刈りの管理を押し付け合い…。
→ 遺産分割協議で「誰が管理責任を負うか」「売却するか」を明確にしておけば防げたかも。

▽ ケース2:売却したいが名義が親のままで手続きできない

実家を売ろうとしたら、不動産の名義が亡くなった親のままだった。
→ 遺産分割協議書がなければ登記変更もできず、売却も処分も不可能。

▽ ケース3:口頭で「長男が家を相続」で話はついていたが…

後になって他の兄弟が「そんな話は聞いてない」と主張。
→ 書面にしていなかったため、相続登記ができず、トラブルに発展。

このように、遺産分割協議書は、後々の「言った言わない」や相続トラブルを未然に防ぐ重要な役割を果たします。


■ 遺産分割協議書に必要な内容

遺産分割協議書は、自由に作成できますが、以下の要素を正確に記載する必要があります。

● 基本構成(例)

  1. 被相続人(亡くなった方)の氏名・本籍・死亡日
  2. 相続人全員の氏名・住所・続柄
  3. 分割内容(誰がどの財産を取得するか)
  4. 不動産の場合は、登記簿通りに正確な記載(所在、地番、面積など)
  5. 相続人全員の署名・押印(実印)
  6. 各相続人の印鑑証明書(登記の際に必要)

✅ ポイント:
相続人全員の同意がない協議書は無効になります。たとえ1人でも抜けていると、法的効力が認められません。


■ 不動産が含まれる場合の注意点

不動産が遺産に含まれている場合は、記載方法や後の手続きに特に注意が必要です。

  • 登記情報(登記簿謄本)を取り寄せ、正確な表記で記載
  • 土地と建物が別登記になっていることがある
  • 評価額や売却予定がある場合は、資産価値を事前に査定しておく
  • 解体予定なら、その費用や段取りについても協議内で言及しておくとよい

■ 協議書作成後の手続き

遺産分割協議書を作成したら、それを使って以下の手続きを進めます。

  • 不動産の相続登記(司法書士に依頼することが多い)
  • 銀行口座や証券口座の解約・名義変更
  • 自動車、保険、年金などの相続手続き

特に不動産の登記は2024年4月から義務化され、3年以内に登記をしないと過料の対象になる可能性もあるため注意が必要です。


■ 遺産分割協議書の作り方

協議書は自分たちで作成することもできますが、以下のような専門家に依頼することで、スムーズかつ確実に進められます。

● 主な相談先

  • 司法書士:不動産登記に詳しい。協議書作成〜登記まで一貫して依頼可能
  • 弁護士:相続トラブルを抱えている場合の交渉や訴訟に対応
  • 行政書士:文書作成に強く、遺産分割協議書の作成を中心に対応
  • 税理士:相続税の申告が必要なケースで対応

✅ 専門家の費用はかかりますが、後々のトラブルや手戻り、家族関係の悪化を防ぐ意味では十分な価値があります。


■ 実家や不動産をめぐる相続、こんなときは要注意!

  • 相続人の仲が良くない・会っていない
  • 実家に未登記の増築や納屋がある
  • 借地権・共有名義の不動産がある
  • 老朽化した建物を解体したいが、費用の分担で揉めそう
  • 売却したくても、誰も動こうとしない

このような場合は、遺産分割協議書を早めに整え、「誰が何をするか」「どの財産を誰が相続するか」をはっきりさせておくことが大切です。


■ まとめ:協議書を作ることが、相続トラブルの第一の予防策

相続でもっとも揉めやすいのが「不動産」、特に「実家」の扱いです。
思い入れがある場所だからこそ、感情がこじれることも珍しくありません。

遺産分割協議書は、**単なる書類ではなく、「家族で納得して未来を見据えるための合意書」**です。
口約束だけでなく、きちんと形にすることで、後の売却、処分、解体、登記といった不動産に関する手続きがスムーズになります。

「うちは仲がいいから大丈夫」
「後で話し合えばいい」
そんな気持ちが、大きなトラブルの火種にならないように――

相続が発生したら、ぜひ一度「遺産分割協議書」の作成を検討してみてください。

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