【コラム】相続が起こったときにまず確認すること

「親が亡くなった」「実家を相続することになった」
そんなとき、多くの人が直面するのが「不動産の相続」に関する悩みです。

預貯金の相続と異なり、不動産は分けにくく、感情や価値観の違いからトラブルに発展しやすいものです。とくに「実家」など、家族にとって思い入れのある不動産の相続は、冷静な判断が難しくなることもあります。

本記事では、相続が発生した際にまずやるべきこと、特に不動産に関する手続きや考え方、売却や処分、解体といった選択肢について、分かりやすく解説します。


1. まず確認すること:遺言書の有無と法定相続人の把握

相続が発生したら、まずやるべきことは「遺言書の有無の確認」です。

▽ 遺言書がある場合

内容に法的効力がある場合、その指示が優先されます。公正証書遺言であればすぐに開封可能ですが、自筆証書遺言の場合は、家庭裁判所での「検認」が必要です。勝手に開けてはいけない点に注意しましょう。

▽ 遺言書がない場合

この場合は、民法の規定にしたがって「法定相続人」が遺産を相続することになります。まずは戸籍を取り寄せ、相続人が誰なのかを正確に把握しましょう。意外な相続人(たとえば前妻との子)が出てくるケースもあるため、調査は慎重に行います。


2. 相続財産の把握:不動産の内容を明らかにする

相続財産がどのくらいあるのかを把握することも重要です。

▽ 特に注意すべきは「不動産」

実家や土地、収益物件などの不動産は、相続財産の中でも価値が大きく、扱いも複雑です。

  • 所有者名義は誰か(登記簿で確認)
  • 住宅ローンや借金は残っていないか
  • 固定資産税の支払い状況
  • 管理状態(空き家・老朽化していないか)
  • 賃貸しているか(借地・貸家の契約状況)

これらをすべてリストアップして、家族で共有することがトラブル防止につながります。


3. 遺産分割協議:不動産の扱いで揉めないために

相続人全員で話し合い、遺産の分け方を決める「遺産分割協議」は非常に重要なステップです。

▽ 不動産は「分けられない」財産

現金のように等分できないため、「売って現金化する」「誰かが相続して他の人に代償金を支払う」「共有で持つ」などの方法がとられます。しかし、この「共有」が後々のトラブルのもとになることが非常に多いです。

「兄弟3人で実家を相続したが、誰も住まないため管理が疎かに。固定資産税を誰が払うかで揉めて絶縁…」

こうしたケースは珍しくありません。できるだけ早い段階で不動産の方向性(売却・処分・解体)を決めておくことが肝心です。


4. 不動産の評価と売却・処分・解体の判断

不動産をどう扱うかを決めるためには、その「価値」と「コスト」を把握する必要があります。

▽ 売却する場合

  • 不動産会社に査定を依頼し、相場を把握
  • 売却益に対して譲渡所得税が発生する可能性がある
  • 古い家屋の場合、更地にして売ったほうが売れやすいケースもある

▽ 解体して更地にする場合

  • 解体費用(100〜200万円程度)は自己負担
  • 更地にすると固定資産税が上がることも
  • 近隣との境界確認や整地工事も必要になることがある

▽ 住み続ける・賃貸する場合

  • 建物の修繕や管理の責任が発生する
  • 空き家特例の適用など、税金面での配慮も

5. 不動産相続トラブルでよくあるケースと予防策

【ケース1】兄弟で共有したが誰も住まず放置

→ 固定資産税の滞納や、老朽化による近隣トラブルに発展
対策:誰か1人に相続させるか、早期売却を検討

【ケース2】亡くなった親が借金していた

→ 不動産を相続したら債務も一緒についてきた
対策:相続放棄も含めて弁護士に相談を

【ケース3】解体費用や売却益の分配で揉めた

→ 解体した人だけが損をする形になり不公平感が
対策:事前に協議し、全員の同意のもとに進める


6. 専門家への相談は早いほど良い

不動産の相続は、登記や売買、税金など、複数の法律や制度が絡んできます。自分だけで進めるのは限界があるため、以下のような専門家に早めに相談するのが望ましいです。

  • 弁護士:遺産分割やトラブル時の交渉
  • 司法書士:相続登記や名義変更
  • 税理士:相続税や譲渡所得の計算
  • 不動産会社:売却・解体のサポート
  • 解体業者:老朽化した建物の処分

まとめ:感情と現実の間で、冷静な判断を

実家の相続、不動産の売却や処分は、家族の思い出や感情も絡むため、非常にデリケートな問題です。

しかし、放置すればするほど問題は複雑になります。
「今はまだ大丈夫」「落ち着いてから考えよう」ではなく、まずは事実を把握し、誰と、どう動くかを明確にしましょう。

不動産相続は「いつか」ではなく「いま」向き合うべき課題です。トラブルの芽を摘むためにも、専門家の力を借りながら、冷静に、そして誠実に向き合っていきましょう。

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