【コラム】相続放棄って知っていますか?

〜実家や不動産をめぐる相続トラブルを避けるために〜

「親が亡くなったけど、実家の相続はどうしたらいいんだろう」
「古くて誰も住まない実家を相続しても、正直困る…」
「不動産って売却や解体にもお金がかかるって聞いたけど、どうすれば?」

身近な人の死という大きな出来事の直後、多くの人が直面するのが「相続」に関する悩みです。特に不動産の相続にはトラブルの種が多く潜んでいます。家は思い出が詰まった場所である一方で、現実的には維持管理や費用の負担が重くのしかかることも。

そんなとき、選択肢として考えておきたいのが「相続放棄」という制度です。


■ 相続放棄とは?

相続放棄とは、自分が相続人として得るべき財産や権利を、一切受け取らないと法的に宣言することです。相続が発生した際、相続人は以下の3つの選択肢をとることができます。

  1. 単純承認(すべての財産・債務を相続する)
  2. 限定承認(資産の範囲内で債務を返済する)
  3. 相続放棄(何も相続しない)

中でも「相続放棄」は、プラスの財産よりマイナスの財産が多いとき、あるいは管理・処分が困難な不動産を引き継ぎたくないときに有効な手段です。


■ どうして「相続放棄」が必要になるの?

1. 借金や負債が多い

相続は「財産」だけではなく「借金」や「未納の税金」「連帯保証人としての債務」も引き継ぎます。
とくに以下のようなケースでは、相続放棄を検討すべきです。

  • 故人が多額の借金を残していた
  • 連帯保証人になっていた
  • 消費者金融の借入が多数あった

このような場合、相続放棄をしないと、法的に返済義務が発生してしまうことになります。


2. 老朽化した不動産の管理が難しい

よくあるのが「地方にある実家」の相続です。

  • すでに空き家になっている
  • 築50年以上で修繕が困難
  • 田舎すぎて売却先が見つからない
  • 解体費用に100万円以上かかる
  • 固定資産税の支払いが重荷

このような不動産は「資産」というより「負動産(ふどうさん)」と呼ばれることも。
相続しても住む予定がなく、売却や処分にもコストがかかる場合、相続放棄で最初から受け取らない方が賢明なケースもあります。


3. 兄弟間や親族間のトラブルを避けたい

相続の際、兄弟や親族で話がまとまらず、遺産分割協議が泥沼化することがあります。

  • 「あの人だけ得をしている」
  • 「実家の管理は押し付け合い」
  • 「売却にも解体にも誰も同意しない」

このような争いに巻き込まれたくない場合、「私は放棄するので自由にしてください」と、早い段階で身を引くのも一つの方法です。


■ 相続放棄の手続きと注意点

● 相続放棄には期限がある!

相続放棄は**「相続の開始を知った日から3ヶ月以内」**に、家庭裁判所へ申述する必要があります。

✅ ポイント

  • 「遺産の内容を知らなかった」は原則通用しない
  • 3ヶ月過ぎて放棄したい場合は、弁護士の助けが必要になる

この「3ヶ月ルール」を知らずに放置すると、自動的に「単純承認(相続する意思あり)」とみなされてしまいます。


● 書類と手数料

申述に必要なものは主に以下のとおりです:

  • 相続放棄申述書
  • 被相続人の戸籍(出生から死亡まで)
  • 自分の戸籍謄本
  • 申述人の住民票
  • 裁判所への申述手数料(1人につき800円程度)

書類不備や記入ミスがあると再提出になることもあるため、心配な場合は司法書士や弁護士に相談すると安心です。


● 放棄したら「何ももらえない」

相続放棄をすると、「借金を背負わなくて済む」代わりに、

  • 現金や預貯金も
  • 実家の土地建物も
  • 形見や家具などの動産も

すべて受け取れなくなります。
中途半端に財産を処分したり使ったりすると、相続したとみなされ、放棄が認められなくなる場合もあるため要注意です。


■ 放棄したらその不動産はどうなるの?

相続放棄をした不動産は、次順位の相続人(たとえば兄弟姉妹)が引き継ぐことになります。それも拒否されれば、最終的に「相続人不存在」となり、家庭裁判所が「相続財産管理人」を選任し、売却や処分などの手続きを行います。

ただし、その間も固定資産税は「相続人でない人」が請求される可能性があるなど、問題が残る場合も。
そのため、放棄する際は、他の相続人との連携や共有も忘れないことが重要です。


■ 相続放棄をする前に考えるべきこと

  1. 不動産の価値を査定してもらう
     → 実は売れば利益になる可能性も
  2. 解体・売却・処分のコストを把握する
     → 将来的にいくら負担になるかを計算
  3. 感情に流されず、冷静に判断する
     → 「親の家だから」と無理に抱え込まない
  4. 専門家に早めに相談する
     → 司法書士・弁護士・不動産業者などを活用

■ まとめ:相続放棄は“逃げ”ではなく“戦略”

相続放棄というと、「責任放棄」「家族を見捨てた」といったネガティブなイメージを持つ人もいます。
しかし、現代では「相続放棄」は不動産トラブルから身を守るための賢明な判断でもあります。

特に、実家や空き家の相続では、売却・処分・解体といった決断が必要になり、その費用や手間、精神的負担が予想以上に大きいことも。

放棄を選ぶかどうかは人それぞれですが、大切なのは「正しく知って、期限内に冷静な判断を下すこと」です。


**「実家の相続、どうすれば…?」**と悩んでいるなら、まずは一度、相続放棄という選択肢について調べてみてください。
自分を守り、家族間のトラブルを未然に防ぐ第一歩になるかもしれません。

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